財務体質強化の考え方
2018.10.25
中小企業の創業者は、儲かる事業の発掘、社員を虜にする人間性、事業の成長発展にかける情熱には人一倍強いものがあり、損得の計算は並ならぬ才能を発揮し、儲けることへの執念はことさら強いものがあります。
高度経済成長期、バブル期を経験した会社の多くの経営者は、損益計算(売上から原価経費を引く)が経営の基本で、損益計算さえできていれば十分であると考えています。
銀行は収益力と担保さえあれば、いくらでもお金を貸してくれました。
経営者は銀行と良い付き合いをする事でいくらでも会社を成長発展させることができ、「お金のことは支店長に聞いてくれ」と豪語する経営者さえ現れる時代でした。
銀行も資金の調達と運用を任され、短期、長期の資金を自由自在にコントロールし金利を稼いでいたのです。
損益計算書重視の考え方は、売上高、利益を最大にするまさに超短期的な考え方で、経済が成長している成長期には非常に有効に働く経営管理の手法です。
ところがバブル崩壊後、思うように成長軌道が描かれない成熟期においては、売上と利益のみを経営指標とすることには無理があります。
今日においては、利益の極大化のみならず効率的な投資(ITやAIなどへの投資)や、経営者のやりたい事に対して迅速に取り組むことができるかが会社発展の鍵となります。
その場合、単年度で見ると損益は赤字になったとしても、長期的に見ると企業価値を十分向上させる場合もあります。
しかし大きく経営環境が変化した今日においても、なお損益計算中心の思考は経営者の頭から抜けることがなく、売上と利益の極大化に全精力をつぎ込んでいるようです。
そこで登場したのがキャッシュフロー計算書です。
キャッシュフロー計算書はキャッシュの流れを説明する、ごまかしの利かない財務諸表です。
強い経営体質を築くためには、いかにキャッシュを稼ぐことができるかということを経営目標にしなければなりません。キャッシュを潤沢に積み上げることこそ企業価値を向上させる一番の近道と考えます。
会社として投資が成功し、事業が順調に推移した場合、会社の損益は黒字化します。そして経営陣など利害関係者が納得するキャッシュを生み出す経営は、経営者にとって最高の経営手腕ではないかと思います。
経営者としてファイナンス(財務)を強化することが経営基盤を盤石にし、マーケットを果敢に攻める強みとなります。
正にファイナンスとは財務と経営戦略(キャッシュフロー重視の経営)の融合なのです。
今すぐ損益計算重視の経営から企業価値向上の経営に舵を切りたいものです。