事業承継の話題

事業承継の話題

2018.08.06

平成30年税制改正により、税金ゼロで自社株を後継者に譲ることができるようになりました。

生命保険会社など金融機関や会計事務所・コンサルタント会社は鬼の首を取ったかのように、こぞって経営者詣でをし、事業承継のパンフレットやチラシを渡し、セミナーへの参加やコンサルティングの勧誘に勤しんでいるようです。
私どもの事務所は4月13日、どこよりも先駆け改正条文をもとに『自社株を税金ゼロで後継者に譲る方法』というタイトルでセミナーを開催しました。
税金ゼロで自社株を後継者に譲り渡すことは、要件を満たし、定められた手続きを淡々と進めるだけで何ら難しいことではありません。手続き規定をそのまま運用するだけです。

ところが事業承継について経営者と打ち合わせをしていると「税」のこともさることながら、黒字決算が続き世間並み以上の利益があり、「社長がいなくなったら我が社は困ります」など、お客様や取引先から信頼が寄せられ、そこそこの役員報酬を得ていると会社を譲るに譲れない、売るに売れない迷いの状況が続き、創業者は判断ができないのです。

創業者にとって会社は我が子同然に手塩にかけて育ててきた愛しい存在なのです。その可愛い会社を譲る事(手放す事)に対する大きな抵抗があるのです。

会社を簡単に譲れないのは人間に欲があるのは当然のこととして、後継者の資質が不足していたり、優秀な子が後継の意思を示さないなど、早く事業承継しなければならないと分かってはいるが、創業者の思い通りにならない場合が多くあります。

新聞紙上においてはただ単に「後継者がいない」という短い言葉で表現しますが、事業承継こそ周りの人があれこれ言うほど優しくないのが現状です。
会社の業績が良く、持続的成長が見込まれるようであれば、あっさり割り切って会社を売ってしまう方がやさしいかもしれません。

まさに事業承継とは、創業者の今日までの苦労話や成功の手柄・成功の秘けつなど昔話を聞きながら、将来の構想が形になり、後継者が決まり、心の葛藤が整理され、譲ること、手放すことを心の底から決意するまでが難行苦行の連続です。
まさに人間の本性をさらけ出し、欲を封印し、人間としての最高の境涯に達してこそ成し遂げることができる現役最後の役目です。(最高の境涯に達していない場合は、院政を敷き最後まで権力者であり続け、晴れ晴れとした引退の花道が歩けないのです。)

この様な難しい事業承継について、うまく的を捉えた言葉として、住友銀行の伊庭貞剛氏の次の言葉があります。
「仕事のうちで一番大切なことは、後継者をえること、後継者に仕事をひきつがしむる時期を選ぶ事である。後継者が若いといって譲ることを躊躇するのは、おのれが死ぬということを知らぬものだ。」(伊藤肇 『帝王学ノート』より)とあります。
死ぬことがわかっていれば早め早めに手を打つことが大切であると思います。
先ずは税の手続きなどはさておき、後継者を決める事です。そして後継者の育成を考えようではありませんか。そしていつバトンを渡すのか、いつ株を譲るのか決めればいいのです。

ともあれ、税金ゼロで株を譲るためには、代表取締役を退任することが大きな条件の1つなのです。